Loading...

achives

2017.08

「普通」の中にこそ。―ハンバーグ待ちの考えごと

ペチ、ペチッと手のひらに肉が当たる音がしたと思ったら、
成形された塊が、次々に鉄板にスッと滑り込む。

しばらくして、チリチリと油が跳ねる音が聞こえてきた。
シュッ、チリチリチリチリ、
シュッ、チリチリチリチリ。
ヘラでハンバーグがひっくり返される。

カツッ、ジョワー
というのは、鉄板に生卵を割って目玉焼きを作る音。

タッタッタッと、包丁がまな板に当ったら、キュウリが同じ薄さにスライスされた。

耳をすますと、
待っている間も、お店の中に響く、おいしそうな音。

「きっとおいしいだろうな」と期待が大きくなる。食べたくなる。

今日の昼ご飯は、洋食屋さんのハンバーグ。
先日、NHKで、「ノーナレ」というテレビをやっていました。
ノーナレーション。ナレーションなしのドキュメンタリー番組。
ナレーションはなくても、テロップが入ったり、セリフがあったりして、話は進行していきます。

その番組で、工場の音(ばねを作る機械の音、ねじを作る機械の音など)と映像を、テクノミュージックを融合させて、プロモーションビデオを作るクリエイターたちが取り上げられていました。

繰り返し、繰り返し、機械は同じ動きをしているのですが、それを、上手に編集すると、なんだかすごくかっこよく見えます。

こんなふうに表現することもできるんだと、驚きました。それは、それで面白かったのですが、

でも、印象に残ったのは、その工場で働く人たち。

「どんなところにこだわりが?」「やりがいは?」「苦労することは?」

みたいな質問をされても

「そんな・・・いつもやってることだから」
「当たり前だけど、不良がでないようにすることかな」

と、あまり華やかな答えは出てきません。
かっこよい答えはなかなか出てきません。

 

これ、私もよくやります。

 

何か、個性が感じられることや、おぉ!と思われるようなことが、欲しいのです。

完成形に必要な具を集めてしまうのです。

でももし、私が誰かに「何かこだわりは?」と聞かれたら、
「間違わないように」とか
「丁寧に」とか、言うでしょう。

当たり前ですけど。
それでいいのではないか、と最近思うようになりました。
もちろん、その答えの意味をもっと掘りさげて聞くことも、あります。
そうすると、その人の本質にかかわるようなことがあったりもするので、
深掘りをやめましょう、というのではありません。
「普通に、普通のことを、ちゃんとする」ことを、もっと大事にしてもいいと思うのです。

きっと、その普通の中にこそ、なにか、あるのです。

それが、大きな秘密でなくたって。

 

 

 

ハンバーグが焼けるまでの間、そんなことを考えていました。

真っ白な、背の高いコック帽をかぶった男性が、鉄板のハンバーグに向き合っています。
コロッケのタネを丸めて、パン粉を付けて。
エビを冷蔵庫から出して、パン粉を付けて。
フライも、注文が入ってから作るようです。

丁寧に、おいしい料理が出来上がるように、注意を払って。

 

運ばれてきたハンバーグは、焼く前に丸めていた肉の大きさよりも、きゅっと引き締まっていました。

お箸で割ってひと口食べると、ふんわりと、柔らかく、ジューシー。

 

いろんな秘密やこだわりがあるのかもしれない。

その話を聞く機会があれば、それはそれで聞いてみたい。

でも、秘密なんかなくたって、このおいしさはこの人の、この店のもの。

 

もう一口。
あぁ、やっぱり。おいしい。

おいしい音が毎日響くこの店に、この味を食べにこようと、きっとまた思うと思うのです。

京都のあるライターの一日。皮膚呼吸がしたい。

近頃は、毎月20日が原稿締め切りの山場。調べ物をたくさんしなければならない、長い文章を数本20日までに納めなければならない。
だから今頃が、一番羽根が伸びている。次月のテーマに向けて、準備をしながらも、締め切りから解放されたささやかな喜びに浸っている。

…ので、つらつらと、最近感じたことでも、書いておこう。

まだここ2日だけだけれども、夕方からは自分の時間にしようとしてみた。こんな風にブログを書いたり、自分の企画を実現できるように、作業をしたり。以前「ライスワークと、ライフワークは違う」と言った人がいたけれど、ライスもライフも好きか嫌いか、じゃない。したくてしているんだから、どうにかして、1日の流れに組み込まないと。

今日は朝、会社の事務作業をして、そのあと、11時からは9月に掲載になる原稿の最終チェックに励んだ。各150文字とキャプションとショップデータ。短いながらも12本あったので、時間がかかった。原稿を読み、自分が元ネタにしたノートのメモやHP、取材時に撮影した写真と照らし合わせていく。取材したのは、7月の終わりからお盆前。「あれ? なんでこう書いたのかな?」とか、「こうしておかないと、誤解されるかも…」と心配になったりして、取材先に問い合わせたり、編集部に表現について確認したり。こまごまとした確認作業は本当に骨が折れるし、自分がなんで最初からこうしなかったのか、疑問に思ったり、腹がたったり。

合間に、昼ごはん。食べ比べ中の生姜焼き定食。そして、別の確認作業が入ったりして、中断。

ようやく、16時にすべて確認し終える。ここからは、もうひとつの自分の仕事の時間だ。蒸し暑いけれど、近くにジンをたくさん置いている書店があるから、行ってみる。が、臨時休業。はぁ。暑さ倍増。京都では、今週は夏休みをとっているお店が多い。行きつけの美容室も今週は休みだ。こんなに暑ければ、冷たいものを出す店以外は、休んでいいかも。確かに。

そうして、どうしよう…せっかくの自分の時間が。どこかで、考え事をしたいのに。
1日1人で事務所にいて、パソコンに向かっていると、顔の表情筋だけでなく、脳も硬直する。多分心も。外へ出て、新鮮な空気を皮膚からも吸いたい。

足がむいたのは、甘味処。蒸し暑い日には、冷たいあんみつが食べたい。こういう日は、甘めのアイスクリームはいらないから、クリームあんみつではない。あんみつに、白玉トッピングに限る。甘味処で、休憩できるなんて、京都で仕事してて、よかった。

透き通る寒天は、見た目にも涼し気で、スプーンですくうと、ほろほろと崩れる。口に運ぶと、つるんとした食感をわずかに舌に残し、喉の奥に消えてった。
あんはなめらかなこしあん。もちろん、甘い。けれど、全然嫌みがない、すっきとした甘さ。豆の味に甘みが寄り添って、疲れた体が少ししゃんとした。

ありがとう、あんみつ!

さてと、次の作戦について構想を練ろう。こうして毎日、書いているんだけど、まだまだ、書きことがいっぱいあるのよね。

行こうとしてお休みだった店
レティシア書房
URL
http://book-laetitia.mond.jp/
あんみつを食べたお店
月ヶ瀬 堺町店
URL
http://www.tsukigase.jp/

ひできにいちゃん、について。

親戚に、「ひできにいちゃん」というおじさんがいます。

典型的、といっては大変失礼だけど、
典型的な、田舎の人の良いおじさんで、60歳をとっくに過ぎているのに、
いつまでも「にいちゃん」と呼ばれています。

母方の家の本家を継いでいる人物です。

お盆に仏壇をお参りに行ったら、
ひできにいちゃんは
赤と青と黄色に着色した竹の筒をどこかへ運ぶところでした。

何に使うのか聞いたら、
「墓に飾る」といいます。

竹にいれた切り込みに、
ろうそくを立てて、墓を飾るのだそう。

イルミネーション的な??

「はー??なんしよーん」と、ちょっと笑ったけれど、
ひできにいちゃんは、大真面目。

竹の筒を軽トラに積んで、
田んぼの中の道を駆け抜けて、
墓地へと運んでいきました。

墓は、集落のはずれにあって、
その集落のほとんどの人が
そこに眠っています。

ここで生まれて、
ここに眠る。

そんなことができる人が、
日本に今、どのくらいいるのでしょう。

 

ここに生まれて、
田畑と山を守り、
(時には墓を飾り付け)
ここで、人生を過ごすひできにいちゃん。

私のおじいさんも、
ひいおじいさんも、
そうして生きてきたのです。

近くの神社には、
私の祖父母の名前で奉納した狛犬と
その祖父母の兄夫婦の名前で奉納した鳥居と、
ひいおじいさんの名前が書かれた石碑があります。

最初は、
そんなことして、何になるの?
と思ったけど、
それも、この土地を守った証。
死後のちょっとした贅沢なのです。
帰りに、庭を見ると、
ひできにいちゃんが竹に色を塗るときに、
直に庭に竹を置いてスプレーで色を吹き付けたらしく、
納屋の駐車場に、カラフルな輪っかが残っていました。
新聞くらい敷けばいいのに、と思いましたが、
ひできにいちゃんが、竹に色を塗っている姿が思い浮かびました。
先祖がほぼ全員眠るお墓に
みんなが集まるお盆だから、
ひできにいちゃんは、飾り付けをするのです。
ちょっとヘンなアプローチですけど、
彼流のおもてなしです。

すごい見栄えがいいとか、そういうことは大事ではないのです。

先祖も含めてみんなを喜ばせたいから、しているのです。
私は、海の向こうに憧れて、田舎を出ていくタイプの人間です。
でも、ひできにいちゃんを見ると、少し我にかえるのです。
地面に足をちゃんとつけないと、転んでしまうよって。

根っこはどこにあるんだい?って。

お盆に我にかえれて、よかったなと思いました。

京都・二条の印刷会社、修美社様のウエブページの文章を担当しました

広告の仕事をかれこれ…20年近くしています。就職してからずっと「印刷屋さん」にはお世話になってきましたが、印刷のことをこれほどに真剣に考え、楽しんでいる会社に出合ったのは、初めてです。

グラフィックのデザイナーさんの紹介で修美社さんと知り合ったのは、2年ほど前。いくつかの案件で印刷をお願いしてきました。工場を見学させてもらうと、若手からベテランまで十数人の職人さんたちが、新旧いくつかの印刷機を駆使して、印刷をしています。機械を日々メンテナンスして、調整して、刷ってみて、また調整して。デジタルで行う部分もあるのでしょうが、人の手が必要なところもたくさん。印刷機とがっぷりよつ。とっくみあいしているかのようです。

修美社さんと仕事をしていると、「あぁ、印刷って人がしているんだ」という、当たり前のことに気付かされます。顔の見える相手と仕事ができるのは幸せなことです。

さらに修美社さんは、印刷を通じて、印刷文化の発信をしようともしています。社屋の中に「実験室」なるイベントスペースを作って、展示をしたり、販売をしたり。自分たちが携わっている印刷という仕事は、こんなに面白いんだということを、たくさんの人に知らしめるべく、工夫を重ねています。

今、あなたの近くにも、何かしら印刷されたものがあるでしょう?

その紙にも、たくさんの人の手が関わっています。

気持ちのこもったものは、愛おしい。

ものづくりに携わっている実感を得ながら、仕事を進められる、素晴らしい印刷屋さんです。

まだまだ面白い試みが進行中。

私一人では到底できないプロジェクトに引き込んでくれて、とても楽しいです。

クライアント
有限会社修美社(印刷会社)
URL
http://syubisya.co.jp/

夏季休業と営業時間のお知らせ

暑いですね。今年も始まったなぁと思ったらもうお盆! すぐに正月が来そうな勢いが怖い…。

今日は夏季休業のお知らせです。

夏季休業:8月11日~8月16日

メールなど、返信できませんので、連絡が必要でお急ぎの方はお電話ください。

また、ここでそもそもの営業時間のお知らせもさせていただきます。

 

 

営業時間について

「文と編集の杜」は、月~金曜午前9時から午後6時を営業時間とさせていただいています。
誠に申し訳ございませんが、夜間や休日を含めたスケジュールをはじめから組むことはしておりません。ただし、当方のスケジュール管理のミスや状況により、夜に執筆をしたり、土日を使わざるを得ないこともございます。これを私は「残業」や「休日出勤」と呼んでおります。ですので、金曜日に取材をして月曜日納品は、事情がない限り、現在お受けしておりません。

ライターとして活動をし始めてから10年が経ちました。そして、この仕事を一生するつもりです。昼も夜もなく、休みもなく、書き続けることには限界があり、それは私の望む姿ではないな、と思うようになりました。予定をきちんと立て、納期に遅れることなく、クオリティの高い文章を納品するのが、今の私の希望ですし、そういう環境を作るのも自分の力量だと思います。

こういうと、「急ぎの仕事はしない」と受け取られてしまい、仕事が減ってしまうのではないかと恐れて明言を避けてきました。ですが、最初からスケジュールをある程度重視することを黙っていて、依頼があったときにお断りしては失礼ですし、分かり合える人を探すことも、仕事を進めるうえで、大切かと思います。また、急な仕事が入ったために、スケジュールを確保したご依頼をいただいた方の仕事が、後ろ倒しになってしまっては、本末転倒だと思うのです。

とはいえ、「明日までに」は難しいかと思いますが、1週間~10日いただければ、通常対応させていただいています。時間をいただければ、その方のために、全力で考えます。

広告や出版の業界が、ほとんど夜も休みの日も働いていることは承知しております。ですが、私はこのスタイルで参りたいと思います。何が正しいとか、そういうことではなく、です。

この時期に、この文章をアップすることに、何かあったとか、特定の狙いはございません。いつかアップしようと思っていたテキストをこの機会に、公にした、というなりゆきです。

どうぞご理解のほど、よろしくお願いいたします。

お問い合わせ

下記ボタンからメールでご連絡ください。

contact
contact