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コラム旅日記。静岡へ。どら焼きは旅の味
予定通りに原稿が仕上がらず、結局夜中までやって、
旅の支度をして、よく眠らないうちに乗った新幹線。
車内アナウンスの「間もなく名古屋です」
の〝名古屋〟のアクセントが、名古屋風になっているのに気が付いて、
ようやく旅感が増してきた。
高校時代からの友人に会いに、静岡・袋井市へ。
とくに観光をするというわけでもなく、友達に会うためだけの旅。
おしゃべりをして過ごす1泊2日。
新幹線を浜松で降りて、友達と合流。
その友達の息子が出ている水泳の大会を見学するために、「トビオ」という名前のプール施設へ。
50メートルプールと、25メートルプール、飛び込みの設備まである素晴らしいところ。中学生の大会がこんなところで?浜松市すごい!とびっくりしていたところ、壁にある「古橋廣之進記念」の文字を見て納得。
〝フジヤマのトビウオ〟と呼ばれた古橋廣之進は、現在の浜松市出身だそう。
でも、あれれ。いくら何でも、浜松からは富士山は見えないんじゃ。
と思い、調べてみると、〝フジヤマのトビウオ〟というのは、1949年、全米選手権に出て、400m、800m、1500mの自由形で世界記録を打ち立てたときに、アメリカの新聞で
「The Flying Fish of Fujiyama」と称されたことに、由来しているそうな。
Fujiyama は彼が日本人だったから、イメージでそういったのかもしれないけれど、たまたま静岡つながりになってしまったのだね。
東京オリンピックもあるし、ここから、友人の息子含め、第2、第3のトビウオちゃんたちが世界に飛び出していくのでしょうね。
その後は、友人宅でおしゃべりしたりしてのんびり過ごす。
高校時代の話、彼女の子どもたちのこと、故郷のこと、
「定年後ってどうする?」とか。
10代から、20代も30代も通り越して、そんな話をする年になったかとしみじみ。
来月、彼女の一家は海外赴任でアメリカへ。
想像もしてなかった展開だけど、家族で乗り越えようとしている姿がたくましいなと思った。
福岡の片田舎から始まった私と彼女の人生。高校時代、英語が大不得意だった彼女が、アメリカに住むことになろうとは…。人生って、自分で決めた場所以外にも、導かれて進むこともある。きっとそういう巡り合わせが今回の転勤なんだと思う。
私の人生の旅路はこの後どこへ向かうのかな。
翌日、掛川駅から新幹線に乗る前に、
「桂花園」というお店で買ったお土産を彼女が持たせてくれた。
「桂花園」は、明治から続く、「丁葛(ちょうくず)」という、くず湯のお店。
ベーシックな「くずゆ」のほか、ゆず、ショウガ、茶といった味のバリエーションがあり、
これをお湯で溶かすと、くず湯ができるのだそう。夏はそれを冷蔵庫で冷やして食べるといいらしい。
なんとも東海道の宿場町らしい名物。
旅人が街道の茶屋にきて、くず湯を飲んで一服。疲れを癒し、エネルギーをチャージしたんだろう。旅に名物はつきものですよ。
(写真奥に映っているのは同店で販売している最中)
くず湯は家に帰ってやってみるとして、
その店に売っていたというどら焼きが、ものすごい美味だった。
大きさはやや小ぶり。薄めの生地には、しっかり焼き色がついていて、
その少し焦げたような苦みと、豆の風味が強く残った素朴な粒あんの甘みとちょうど合う。
これも昔からあるのだろうか。
もしそうならさぞかし明治の旅人を魅了したに違いない!と確信。
友達に見送られて、新幹線でぱくりとどら焼きを食べる。
まだ家には帰らない。
次の目的地は、広島。
私はまだ旅の途中なのです。
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