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コラム

建築家・丹治徹也さん、セドリック・ドジェールさん「店と催し 雨露」の空間は、Flexibility, like evolutivity

だいたい私は、いきなり思い立って、いてもたってもいられなくなる。「実現したい!」「実現したい!」と盛り上がってしまうけれど、自分には文章を書くという仕事が少しできるだけで、そのほかは全くと言っていいほど、何も持っていない。

それなのに、ここまでなんとかこられたのは、たくさんの出会いがあったからだ。今回も、偶然にいろいろな人にいろいろな人を紹介してもらって、出会うことができて、助けられて、「店と催し 雨露」をつくることができた。いや、つくってもらったのだ。

そのなかでも、この二人がいなかったら、「店と催し 雨露」はできてなかった!というくらいの恩人が、「atelier Loöwe(アトリエロウエ)」の丹治徹也さんと、セドリック・ドジェールさんだ。アトリエロウエは、兵庫県西宮市にある建築設計・施工事務所。ホームページを見ていただくと分かると思うが、私の小さな店をつくってくれるなんて信じられない!という素晴らしき実績ある会社。それなのに、「ここでやろう」と決めた無謀な私の話を聞いて、私の想いを受け止めて、形にしてくれた。

「店と催し 雨露」のオープンプレイベントとして、最初のワークショップをしてくれた色彩作家の内藤麻美子さんの紹介で、丹治さんが文と編集の杜を訪ねて来てくれたのは2019年の年の瀬、12月28日のこと。そして、「きっと面白がってくれる」と2020年の1月、セドリックを連れて来てくれた。そして、2月1日の内藤さんのワークショップまでに完成してほしい、という無茶な納期…。これに応えてくれたのは、2人に加えて、工事をしてくれた大工の中村さんと伴さん。本当にありがとうございます。

そして、3月上旬。丹治さんとセドリックにあらためて、「店と催し 雨露」に来てもらって、この空間について話を聞いた。何しろ、セドリックはフランス人で、日本語も分かるけれど、主な会話は英語。よって、私は彼の言葉を半分も理解できてないかもしれないけれど、以下は、その会話を意訳したインタビュー。ぜひ、読んでください。

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文と編集の杜・ちくし(以下B)―この部屋見たとき、どう思いました?

丹治(以下T)―狭くて、そしてちょっと暗いかな。

セドリック(以下C)―ここに来る前に少しコンセプトは聞いてた。それで、フレキシビリティ(柔軟性)を楽しむ必要性があるなって。予算とのバランスもね。

B―予算が少なくって(笑)

C―それは問題ではないんだよ。“Less is More(少ないほど豊かである)”って言葉を知ってる? 低予算なことは問題じゃないんだ。解決方法を見つけることで、よりシンプルに、よくなる可能性だってある。ここがとてもフレキシブルで、木材のあたたかみもある空間になったように。

T―この空間が、行列ができるようなお菓子やさんになるのなら、高級素材を使って1000万円かけると思うけど、それだったら別の人ご紹介しようかな(笑)。ここはワークショップをしたりして、少しずつ広げて行こうという場所。上限がある予算のなかでいかに作るかってことも大事なことですよ。

B―セドリックの言うように、プラスティックはできるだけ減らしたしね。

C―プラスティック素材をなくすことで、ナチュラルで、モダンになる。何て言ったらいいのかな…古い日本庭園で感じるようなポジティブな気持ちになる。それはなぜ、私が木を使うのが好きかということにつながっているんだけど。だからこの木のテーブルも重要なんだ。ここには庭があって、窓から光が入る。ここにテーブルを置くと、一枚の絵みたいに見えるでしょう。

左)丹治徹也さん、右)セドリック・ドジェールさん

 

B―こっちの白い棚は、丹治さんとセドリックが来る前に私が買ってしまっていたのだけど、これは邪魔じゃなかった?

C ―これも、ここをつくる環境の一部だよ。新しいプロジェクトには必ず環境がある。例えば窓があるとか、照明があるとかね。それと同じ。ここにこれがあったからこうしようと決めた。これもプロジェクトの一部分で、あなたの担当部分ね。問題じゃない。

B―それは良かった。どうやって空間を仕切ろうか考えた挙句に、某家具店の通販でかっちゃってたものなのだけど(笑)

T―細長く区切ったウナギの寝床みたいな狭さと、突き当りが明るくて庭の緑が見える。セドリックが言ってたみたいに、一つの絵みたいに感じられるのはポイントだよね。この棚がありきなことも、リメイクすることを楽しめばいい。それが一つの条件としてあるだけなんですよ。

C―この空間はとても発展性があると思う。その時、その時で簡単に変えられる、一年後、もっとこの棚を下げて空間を広げたり、壁を別の色にしたり。

T―フレキシビリティだね。

C―そう、フレキシビリティ。進化させるように、変化させられるし、このままでいることもできる。

B―こういうクリエイションをするときに、大事にしてることは何かありますか?

C―私にとって大事なのは感じること。人々がこの空間を心地よいと感じることが、私にとっての大事なこと。どんな環境にいて、どんなプロジェクトをしようとしているのかを知ること。そして、私に何をしてほしいと思っているのか、私に何ができるのかを理解する必要があると思う。

B―ありがとう。私の気持ちを感じてくれたのね。

C―そうするように努力はしたけど、私も完璧じゃないから(笑)

B―この空間とても好きですよ。二人のおかげ!

C―本当? それがこのプロジェクトの重要なパートだね!

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なんて素敵な人たち!としか言いようがない。私から伝えることは、とにかくありがとう! Thank you! Merci beaucoup!

(文・写真:ちくしともみ)

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