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コラム

料理人 内山誠太さん「完成された味だから、そのまま残します」

鳳城(ほうじょう)。漢時代の中国で、門に鳳凰が掲げられていたことから宮城をそう呼び、ひいては都のことを、そう呼ぶようになったとか。唐時代の詩人・杜甫も、長安への想いを述べた漢詩で、長安のことを鳳城と書いています。このことを教えてくれたのは烏丸御池にある「中国料理 鳳城」の内山誠太さん。父の内山和男さんが創業したこの店の2代目です。京都も長安(今の西安)と同じかつての都。悠久の歴史を持つまちであることを、その名前が教えてくれます。

和男さんが店を開いたのは昭和63(1988)年3月2日。それまでは東京の四川飯店や熊本のホテルで中国料理の修業をしていたためか、オープン当初は京都人にとってはやや濃い味だと言われたのだそう。しかも、烏丸御池近辺はオフィス街で、デスクワークの人が多く、軽い口当たりが好まれたようです。そこで、味を徐々に京風にアレンジ。「当たりごま入り麺」(担担麺)など、パンチがありつつもあっさり食べられる料理が誕生したのは、そういう理由があったのです。そのほか「うなぎのみそ炒め」など、和男さんが修業時代に学んだ一流店の味がメニューには並び、30年以上愛され続けています。

今は誠太さんが一緒に厨房に立つ日々。「完成されているので、そのまま受け継ぎます。この味を守りたいので、変えるつもりはありません」と誠太さん。大学時代から鳳城を手伝い、今ではすべてのメニューを任されるまでに。和男さんは「若い感覚を取り入れて」と言いますが、誠太さんは、あくまでそのままの味にこだわります。「新しいメニューは考えていきたいけれど、既存のメニューは父の味で。父が考え抜いて作りだした味。終わらせたらもったいない」(文・写真 ちくしともみ)

京都のグルメ
中国料理 鳳城の「当たりごま入り麺」(担担麺)
URL
https://bhnomori.com/column/1349/

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