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【活版夏まつり特別編集-京都活版MAP-】「祖父が残した、ほぼ同い年の印刷機とともに」 十分屋

二条通に面した大きなガラス窓のそばにあるのは、ドイツ・ハイデルベルグ社製のプラテンT型印刷機。道行く人もつい足を止めて、のぞきこむ存在感。これを操るのは「十分屋」の3代目・山口昌昭さんです。「1960年に製造され、うちにきたのはその翌年。私が生まれた年なのでほぼ同い年です」。60年たった今も大きな故障は一度もなし。「100年、200年、これからもずっとここにあるような気がします」。「十分屋」に並んでいる活字のほとんどは初代である祖父が買い集めたもの。「この活字、持っていたかなぁというときは、やはり祖父の代から使っていた『標準活字目録』で調べることもあります。今は活字がなかなか手に入らないから、祖父が残してくれた財産を大切に使っています」。ところで店名の“じゅっぷんや”。これは、10分で名刺を作るということに由来しているとか。「今は難しくなりました。昔と違って、固定電話や携帯電話の番号、メールアドレスも必要ということが多いので」。少し時間はかかりますが、活字を組む音や機械の音に耳を傾けながら完成を待つのも特別なひとときになりそうです。(取材:内山十子)