column
コラムホノルルマラソンに「出てみました」。 ハワイ日記vol.1
延々と続く人の波。
しんどい。
足痛い。
暑い。
頭痛い。
こんなに苦しいのに、なんでこんなことしているのだろう?
と、誰もが思うのだそうです。
だけど、終わった後にはもう一度やろうと思うのだとか。
2017年12月10日。ホノルルマラソンに出てみました。
「出てみました」という表現が本当にしっくりきます。
前々から出たかった、というわけではありません。
マラソンなんて全く興味がありませんでした。
取引先の方に誘われて、完全にその場のノリで、出ることにしたのが1月。酔った勢いってやつです。
一度「やる」といったことをやらないのは嫌だ、という性格が災いして、本当に出ようと、申し込みをしたのが、4月。
スポーツジムに通い始めたのが、6月。
でも、頑張っても週に2回しか行けず。
ランニングは10キロが最長距離。
・・・のまま、ホノルルに出てみました。
こんな感じで(隣でトリミングされてるのは妹)。
なんとかゴールにたどり着いたとき、
完走できた安堵とともに、
こみあげてきたのは、「考えが甘かったぁ」という反省の気持ち。
そんな、ホノルルマラソンの一日です。
トラブル続きの前半。あわただしいフルマラソンデビュー。
夜中の2時起床。9時ごろベッドに入ったものの、普段そんなに早く寝ないので、眠れるはずもなく、2時間寝たか寝ないか。
しかも! 前夜に、朝食にとおにぎりとバナナを用意していたのに、おにぎりを食べ忘れる始末。早くも嫌な予感。
4時ごろスタート地点へ。ツアー会社が主催するストレッチに参加しようとするものの、トイレの列に並んでいてできず。不安は募るばかり。
5時、スタート。まだ夜はあけておらず、暗闇に花火があがってお祭りさわぎ。
写真を撮る人が多くて前に進めない。後方に並んでいたので、本当のスタート地点を通過したのは、15分後。
海沿いからダウンタウンへジョギングより遅いスピードで走る。真っ暗だけど、街はクリスマスイルミネーションでキラキラ。テーマパークのようなきらびやかななかを大勢が走ったり、歩いたり。だんご状態。
最初から歩いている人もいるので、私でさえ、人を抜く必要があり、まっすぐには走れない。
4㎞あたり、6時半ごろ。最初の給水地点でサングラスをなくしたことに気づく。探しに戻ったりして、10分ロス。この先が思いやられる。
そして、ワイキキビーチへさしかかるころ、空が白くなってきた。
夜が明ける。
お腹がすいてしまったので、ABCストア(コンビニみたいな店。ホノルルの至る所にある)でバナナを買って食べる。また5分ロス。
後から考えたら、このときバナナを食べてなかったら、と思うとぞっとする。きっと倒れていた。
10㎞すぎ、カピオラニ公園で休憩。両足の親指にマメができかかっていたので、絆創膏を貼る。
早くも膝痛。 持参したアンメルツ的なものを塗ったら少しマシになった。
忘れずに栄養ゼリーを食べる。これは1時間おきに必須。
この先、30㎞走ってこの公園に戻ってきてゴール。最初のランナーはもう帰ってきてきている。
なんとなく走れそうな気がしてしまった、7時10分すぎ。
コースはダイヤモンドヘッドの上り坂へ。走って制覇する。うれしい。まだ走れてる。
帰ってくるランナーと続々すれ違う。みんなダッシュするように駆け抜けていく。すごっ。
ダイヤモンドヘッドを下りると、高級住宅街。ここのあたりは気分爽快だったような…。
10㎞から先は練習していない未知の世界。
16か17㎞あたりでハイウェイに入る。折り返してくる浅田真央ちゃんとすれ違う。
カワイイ。ちょっとほっとする。いいなぁ帰り道で。
ここからハイウェイは7kmも続く。景色に変化がなく、単調極まりなく、ときどき少し傾斜がある。しかも向かい風。進めない。
20㎞地点まで走ったところで、後半の体力を考えてウォーキングに変更。
荷物が重たく感じてきたので、持っていたペットボトルの水は飲んで捨てた。
それでも背中を押してくれるものがある。後半は痛みと暑さとの闘い。
ハイウェイの途中でお腹が痛くなってきた。水を飲みすぎたか。休憩所はハイウェイを下りるまでない。
今から考えると、午前中の涼しい時間帯はそんなに水は要らなかった。
単調、単調、単調。変化のない道をひたすら歩く。なんの楽しみもない。太陽がまぶしい。頭が痛くなってきた。
ハイウェイをおりると、また海が近くなった。ここからまた高級住宅街をぐるりと走ってこのハイウェイに戻って来なければならない。
足のマメが痛くなってきた。
休憩所で、「May I help you?」
と声をかけられる。
「I need ワセリン!」
使い方が正しいかは分からないけど、ワセリンをたっぷり塗って絆創膏を5重にする。
背負っているリュックの紐が肩に擦れて痛い。これもワセリンを塗る。手がベトベト。そんなことかまってられない。膝痛は我慢できる程度。いや、もう分かんなくなったのかも。
25㎞地点。10時半。この先はとっておきの作戦開始。音楽の力に頼ることにする。
ミスチルに励ましてもらいながら、試しに再び走ってみる。走れる。でもすぐに気持ち悪くなってきた。暑いせいだ。
無理せず歩くことにする。大丈夫、足は動く。
音楽作戦はなかなか良い。
沿道で街の人が応援しながらお菓子や果物を配ってくれる。
塩味のきいたプレッツェルがおいしかった。
ハイウェイに戻ってきた。
風がやわらいだ。
いつのまにか12時を過ぎていた。
音楽作戦がきいて速足順調。しかし休憩で止まるとなぜか気分が悪くなる。リズムが変わるとよくないのか。ちょっと怖い。
何もかも暑いせいだ。いや、暑い時間に歩いてる私が悪いんだ。
とうとう歩道のベンチに座り込んでしまった。
すると通りがかりの黒人男性に
「Are you OK?」と聞かれる。
大丈夫だと答えると、コースに戻ってこいよ!と励まされる(もう英語忘れた)。
ここで戻ってなかったら、やめたくなったかも。助かった。
30㎞到達。
「あともう少し」だと思った。大きな勘違い。
暑すぎる。頭から給水の水をかぶる。何回も水をかぶって、ずぶ濡れ。見られた姿ではありません。悲惨、悲惨。
動きがにぶくなってきたから足にもかける。ふくらはぎが痛い。でもすぐ乾く。
日陰のないハイウェイがまた単調、単調、単調。
救急車が忙しく、あっち行ったり、こっち行ったり。この辺りから脱落する人が増え始めた。
休憩所以外にはスタッフはいないので、コース上でリタイアする方法は、バイクで巡回している警察官に、具合が悪くて救急車を呼んでもらうしかない。
それ以外は前に進むのみ。
35㎞。すでに12時半。ここのあたりを走っていた真央ちゃんを見たのか。速いなぁ。あれは何時間も前のこと。
またしても高級住宅街を通って、ダイヤモンドヘッドを目指す。「あと少し」と思った反動で、ここからが異常に長い。
太ももがおかしくなってきた。顔も上がらない。アスファルトしか見えてない。速足はもはや無理。歩いてるのが奇跡。
休憩所にも寄りたくない。とにかく「あと少し」だから前に進みたい一心。
家から偶然出てきたマダムに
「Keep going!! GO! GO!」
って、手を大きく振りながら、大声で言われた。
死にそうな顔してたんだろうなぁ。お母さん、ありがとう。
前を向かなくては!
またダイヤモンドヘッドを上る。しんどいけど、この山の向こうがゴールと思えば、なんてことない。
不思議なことに、傾斜のきつさは全然覚えてない。だた、ただ、長いだけ。
ぞろぞろぞろぞろ。たくさんの人が、無言で坂を上ってる。
みんな苦しそう。
下りきると、何時間も前に絆創膏を貼った公園が見えてきた。
ゴールまで、まっすぐ、公園の中をすすむ。
走れないけど、上を向いてみた。
空が青くて、道の両側に、葉っぱがたくさんついた木が続いてる。気持ちいい。
テントが見えてきた。
ここがゴール。
スタートしてから9時間3分21秒。午後2時3分。
ようやく苦行から解放。
続く>
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