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コラム

オープン!オープンデイ特別企画◆ライター・江角悠子さんインタビュー 《後半》

ライター、編集者として雑誌や書籍で活躍しているだけでなく、大学で編集について学生に教えたり、「ライターお悩み相談室」「書くを仕事に!京都ライター塾」といった独自の企画を立ち上げ、さまざまな活動をしている江角悠子さん。オープン!オープンデイでも著書を展示・販売させていただきました。広い視野で文章を書くことを仕事にしている江角さんに、仕事に対する考え方や今後の方向性について、語っていただきました。
(こちらは後半の記事です。前半はこちら) 聞き手・文 ちくしともみ

インタビュー動画はこちらからご覧いただけます。

オープン!オープンデイ特別企画 ライター・江角悠子さんインタビュー

6月に開催したクリエイター紹介イベント「オープン!オープンデイ」に参加してくれたライターの江角悠子さんにインタビュー。ライター×ライターの不思議な空気のなか、結局ライターあるあるで盛り上がりました!動画はこちら!

文と編集の杜さんの投稿 2020年7月7日火曜日

―将来、本を出したいという気持ちはあったんですか?
本を出したいっていう気持ちはずっとありました。だけど、気付いたんですよね。本を出したいけど、何の本を出したいかが分かってないってことに。多分逆なんです。こういうことが伝えたいから本出したい、っていう順番が正しいんですよ(笑) 。私は何でもいいから本を出したい!って思っていました。そんなんじゃ出るわけないですよね。

―伝えたいことが見つかったのが、最初の本『京都、朝あるき』(共著)なんですね。
そうですね。京都は観光客が多いので、朝行くのが絶対いいって思ってたんですよ。私、人混みが苦手で。紅葉の名所に行ったら、人しかいない、もう嫌だ!って帰ったりすることもあったくらい。ですから朝、人がいない時に行ったらいいよ、っていうことを伝えようと。それまで京都のガイドブックの仕事が多かったですし、集大成じゃないですけど、それまでやってきたことで一つ達成できたなって思いました。

―編集者とライター、両方されることもありますね。
ZINE『麗しの洋館たち』では両方の役割を一人でしましたが、まだ、ページ数の少ない冊子だったからできたことと思います。やっぱり本になると他者の目線が重要です。編集者は全体を俯瞰で見てくれますから。今年出版された『亡くなった人と話しませんか』は、スピリチュアルテラーのサトミさんに10時間のインタビューをして書いたんです。でも、編集者のアドバイスで1章丸ごと削られてたりするんですよ。「書いたのにー!」みたいな(笑)。ライターだったら絶対削れないんですけど、編集者目線で、全体を最初から読んでみると「ここがあると読者離れちゃうから、もう削りましょう」って、マルッと削られて。でもそのおかげで読みやすい本になったと思います。書き手としては、思い入れがあったりするんですけどね。

―今後、書きたいテーマはありますか?
新たに伝えたいことが出てきました。私、交通事故で妹を亡くしているんです。子どもが亡くなると、お母さんにはカウンセラーがつくことがあっても、きょうだいは置き去りなことが多い。逆に「お母さん支えてあげてね」と言われて、子どもが辛い思いをしたり。きっとそういう子たちがいっぱいいるので、インタビューして書きたい。実際、私もきょうだいを失くした人の本を探したことがあったんですが、見つからなくて。子どもを亡くした親にむけての本の中にきょうだいの話が少し載っているのを読んで救われました。このことをテーマにするのは、辛くて逃げていたんですけど、伝えたいんです。書くことはきっと私にとってもしんどいと思う。でもやりたい。『亡くなった人と話しませんか』を書くのに2年かかりましたが、「絶対に必要としている人がいる」と思うと書けました。今回もそういう思いがあるので、書きたいと思っています。

 

鮮やかな緑のチェックの素敵なお洋服は弟の江角泰俊さんのファッションブランド「EZUMi」のもの。お似合いです!

―いろいろなお仕事の依頼があると思いますが、どのように受注を決めていますか?
仕事を受ける受けないの選択は、ようやくできるようになりました。決めるポイントは「私に依頼したいのか、ライターを探しているのか」ですね、最近は。前は「誰かライターを」っていうのを全部うけていたんです。でも今は「江角さんにお願いしたいです」っていうのを選ぶように。子育てで時間が本当にないので、それで誰でもいいと思っている仕事をやるんだったら、子どもとの時間に充てようと。最近ですけどね。そう思えるようになったのは。

―「ライターお悩み相談室」ではそういう話も?
はい。ライターあるある話ができて、めっちゃ私が楽しい。私がフリーになりたての時に相談できる先輩がいなくて、ほんと苦労したので、この企画を始めたんです。当時の私を救いたいっていう。定員は6人ぐらいです。私とゲストいれて、最大8人ぐらいですね。これまでに15回やっています。基本的に、私が会って話がを聞きたい方をゲストにお呼びしています。私だけ聞くのもったいないし、みんなで聞きましょうみたいな。

—大学でも学生に編集を教えていますね。「教える」ということをしてみて、感じていることは?
私が当たり前にやってきたことは、技術なんだなって気づきました。書くことも聞くことも、慣れたら当たり前で、私にとっては全然苦じゃない。別に、歯食いしばってやることでもないんですけど、できない人からしたら、これはちゃんとした技術なんだなっていうのがわかって。嬉しかったというか、誇っていいんだなって。

―さらに2020年からは「書くを仕事に!京都ライター塾」がスタートしていますね。
ライター志望の方に全5回で、ライターとしてスタート地点まで持っていって、さあこれからどうぞ!という状態になるまでサポートする講座です。書き方とか、インタビューのスキル、そして考え方も教えます。ライターと作家は違うよとか、商業ライターとは何かとか。お仕事を依頼されて断るか受けるか決めるときに、私はこんなのしてますよとか。そんなの誰からも教えてもらわなかった。何で受けたんだろうって思いながら、泣きながらやるような仕事もありましたから(笑)。

―ライターの可能性について
今こそあるんじゃないかな、と思っていて。SNSが発達して、LINEでもFacebookでもTwitterでもChatworkでも、全部文字じゃないですか。文章を目にする機会は増えているので、文章を書ける人はそこで一歩抜きんでてますよね、書けるだけで。誰でも文章は書けるんですけど、書き方、表現力とかがあると、さらに強みになるし、これからどんどん必要とされるんじゃないかな、と私は思ってます。

《江角悠子さんプロフィール》ライター・編集者。さまざまなウェブメディアや『anan』『婦人画報』といった人気雑誌で執筆。『京都、朝あるき』(共著。2017年、扶桑社)や『亡くなった人と話しませんか』(2020年、幻冬舎)など書籍でもライティングを担当している。また、同志社女子大学で非常勤講師として編集技術を教えているほか、ライター同士の研鑽とつながりを作る場「ライターお悩み相談室」や、ライターを目指す人を応援する「書くを仕事に!京都ライター塾」を開催し、活躍の場を広げている。ホームページ 「京都くらしの編集室」 https://w-koharu.com/magazin

インタビューを終えて。「いつも聞いている立場なので面白かった」(右・江角さん)。「私がしゃべり過ぎたと反省」(左・聞き手ちくし)。ありがとうございました!

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