edit & writing

文と編集の杜 実績紹介

短歌集「こころのわだち」(自費出版)の編集を担当しました。

「こころのわだち」

私に日本語の美しさや、人生の尊さを教えてくれたお仕事です。今年1月に出版したばかりです。

著者の方は、御年100歳。
100歳、百寿の記念に出された短歌集です。
米寿から昨年まで、12年間で詠んだ歌から522首が掲載されています。
私は短歌集の編集なんて、もちろん初めてです。

まずは、とにかく短歌を全部拝見しました。

100歳を迎える心境、想像がつきますか?

短歌を読ませていただいて、とても驚いたのは、

100歳であっても、

若くありたいと思ったり、老いたことを憂いたり。
仕事や趣味をもっと頑張ろうと思ったり、なぜできないんだろうと思ったり。

うれしいこともあれば、悲しいこともある。

日々葛藤があります。

当たり前のことなのですが、若い私たちと、なんら変わらないのです。

いや、むしろ、もっと強く、これらのことについて考えているような気さえします。
私は何の根拠もなく、100歳になれば、年を重ねれば、今の私とは違う存在になる、ような気がしていました。

そんなこと、ないのです。

一日一日を生きていくこと、その結果が、100歳。3万6500日。

今日をどう生きるのか。それだけの、シンプルな積み重ねなんだと、教えていただきました。

 

100歳ですから、古語にたいへん通じておられ、漢字も旧字体を使われることがあります。

分からない言葉に出合うたびに、辞書で調べました。
インターネットで調べるよりも、高校生の時に使っていた古語辞典が役に立ちました。あの薄い紙の質感が久々に心地よかった。(捨てなくて良かった!古語は新たにできませんし)

そして、声に出して読んでみました。

五七五七七。三十一文字(みそひともじ)で、景色や出来事、それに対する想いを表現します。

たったそれだけで、そのシーンが目に浮かびます。
こんな短く。そぎ落とした文字数で。

文字を見ることも大事な要素だと、つくづく感じました。
文字の形からも、人はイメージをつくり出しているようです。

この本をお手伝いしてから、いろいろな俳人たちの俳句を読んでみました。
いつも説明たっぷりの私の書く文章が恥ずかしくなるほど、
洗練されていて、ストレートで。

日本語って美しいなと思います。

 

こちらの本、装丁もこだわって、全体のテーマを白に。

表紙は和紙、背に布を使った「継ぎ表紙」という方法を用いました。
本のタイトルは金色で箔押し。和紙に押して、表紙に貼りました。
もちろん、なかの短歌ページは、真っ白。


さらに、お祝いなので、赤と白色のケースを作成し、ご挨拶状を挟み込みました。

文と編集の杜史上、いや、私史上、もっとも手のこんだ装丁です。

このお仕事をご紹介くださった印刷屋さん、そして本のデザイナーさんのアイデアのたまもの。
感謝、感謝です。
著者の方の普段の様子や、日ごろ見ておられる風景も撮影して掲載しました。
撮影して下さったカメラマンさんにも感謝です。

そして根気強くお付き合いくださった著者の方にも、感謝しなくてはなりません。
いろんな方の協力で、こうやって一冊の本になると思うと、愛おしさもひとしおです。

編集の仕事って何だろうと思うことがあります。
今回は、自費出版ですから、基本的には著者の方の想いが最優先。
「こちらの編集方針に合わせてください」って無理強いしたりしません。
著者の方の想いを、「よりよく」かたちにできるように、考えて、悩んで。
読んだ人が分かりやすいように交通整理をする。
そんなふうにしながら、完成まで一緒に歩くってことなのかもと、この本を通して答えが1つ見えたような気がします。

 

こちらの本は600冊制作し、周囲の方々にプレゼントされたそうです。
私のところにも数冊しかありません。
ですので、読んでみたい!と言う方はお貸ししますので、おしゃってください。

 

 

最後に、著者の方がいつも言われる言葉をお借りします。

 

「今日のほかに人生はない。明日は今日の続き。今日一日を心豊かに生きましょう」

 

私たちの想像もつかない、大変な時代を生き抜いてこられた大先輩からのメッセージです。

 

 

印刷
有限会社修美社
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デザイン
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