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【活版夏まつり特別編集-京都活版MAP-】「耳をすませば、すべては印刷機が音で教えてくれる」修美社

昭和35年創業。山下修吉さんが一台の活版印刷機を買って、自宅の三畳間に置いたのが始まり。二条城近くの一軒家に、家族6人と印刷機が同居する日々。時代は高度成長期。名刺、年賀状、伝票などなど、仕事はたくさんあった。12月は年賀状だけで一年分の収入があったくらい忙しかった。少しずつ活字を買って、会社がある程度軌道に乗ると、ドイツの活版印刷機を買い足した。この機械がずっと修美社に残っていたが、5年ほど前に手放してしまっていた。ところが2018年、縁あって名古屋の印刷所から活版印刷機を譲り受け、さらに翌年には、京都の印刷会社からもドイツ、ハイデルベルク社のプラテンを譲り受けることができた。修美社にふたたび、活版印刷機の音が響き始めた。モーターの回転からVベルトに力が伝わり、圧縮エアーで紙を吸い上げたり、離したり。いろんな音が聞こえてくるが、それが一番の魅力と、社長の山下泰茂さん。「紙と活字の印圧の究極のバランスが修美社のウリ。一定のリズムで奏でるローラー音、ポンプの圧縮音、インキ壺を廻す音、紙を吸い上げる音、クラッチが入る音、枚数カウンターの廻る音。職人はすべて音で判断します」。昔のように活版で“一年の売り上げ分稼ぐ”というわけにはいかないが、今日も名脇役として、いい音を出している。(取材:ちくしともみ)

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