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【オープン!オープンデイ便り その7 太田明日香さん】

『愛と家事』。

気になるタイトルだ。ZINEとして制作されたものが好評を博し、増補して、書籍としても出版されている。今回の「オープン!オープンデイ」では、そのZINE版、書籍版の両方を購入可能。私は、まずサンプルとして送っていただいたZINE版を読んだ。

本というのは、実際に手に取って読んで、ご自身で感想を持つべきものだから、例によって内容に深入りしないでおく。だから、読書感想文を少しだけ。
ZINEにおさめられた9編のお話は、いろいろな愛や、自分という存在や、そして暮らしについて、考えさせられた。少しヒリヒリ、チクチクと心が痛んだ。それは、太田さんの気持ちを理解しようとしてか、自分に置きかえてかは、分からない。

 

読み終わってみて、やはりタイトルに集約されているように思った。「愛があれば、何でも許される」「相手も“自分と同じように”、自分を愛してくれている」。そんなことは、妄想だと思う。私は。たとえ夫であっても、家族であっても、自分以外の人の本心は永遠に分からない。それが今年、結婚20年を迎えた私の確信。夫婦仲がいいことを「ラブラブね」なんて言われても、一つ目のラブは自分のラブ、二つ目のラブは相手のラブ。だから、「ラブはわかるけど、ラブラブかどうかは不明」だと言ってきた。

それなのに、そんな不確かなもので、一緒に住み、私も夫も家事という具体的な働きを毎日こなしている。私たちの暮らしはそうやって成り立っている。時々、自分の存在を確かめるための愛が驚くほど不確かであるがゆえに、「相手のためにこれをやってあげる」と、身勝手な“思いやり論”を持ち出して、結局すれ違って、一層不安になったりもする。確かめる必要はなかった。ぼんやりさせとけばいい。マジックはタネが分からないから感動できるのに。なのに確かめくなる。そこも、ヒリヒリ、チクチク痛い。

 

夫婦関係だけではない。家族、友達。人間ってめんどくさい。

だけど、なぜ、一緒にいるのだろう?

そこがまた、一段とめんどうな問題。太田さんの作品を読んであらためてそんな風に思った。

 

『愛と家事』のほか、『オリンピックに万歳しながらテレビを消そう』『さわるな』の2作品を展示。

 

コロナはまだしばらく終息しそうにもない。ステイホームしてると、家事も多くて、ちょっと疲れる。
そんななか、不確かではあるけれど一緒にいる人がいるこの現実を幸せだと感じるのも事実だ。

(文・写真:ちくしともみ)

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