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achives

2016.06

初めて「サヴァラン」を食べたのは、18歳のとき。

その頃の私は、高知県で寮生活を送りながら、大学を退学しようかと悶々としていた。
「気分転換にいいじゃないか」と、父親にすすめられて、大学の厚生課(きっと今でいう学生課)に貼りだしてあった「アルバイト募集」に応募。近くのケーキ屋さんで働くことにした。

その店はちょっとセレブなおばさんが、暇に任せて1個300~500円もするようなケーキを自分で作って売っていた。当時にしてはその価格は高級だったと思う。
確か消費税が始まった頃とかで、ケーキの値段に端数があって、いつも大混乱していたのを覚えてる。
368円+475円は・・・・とかそういう感じ。
パンも焼いていて、ラグビーボールみたいな大きさと形のパンが1600円くらい。
食パンにいたっては、私が大学を終えてバイトにいくと大概売りきれていた。それなりに流行っているようだった。
喫茶もやっていて、理科の実験道具みたいな器具で、コーヒーをカポカポッといわせて一杯ずついれる(今思えばサイフォン)。
カップは金の縁がついたジバンシー。・・・18歳にはちと荷が重く、他の曜日にアルバイトに来ていた同じ大学の学生は、見事にこのコーヒーカップを割って、すぐに辞めてしまった。

私は週に2、3日しか行っていなかったけれど、甘いケーキの香りを堪能しながら働くのは楽しかった。
巨大なチェリーの缶詰をあけて、ビンに小分けにする仕事をおおせつかると、ちょっとチェリーを失敬しては、これはさくらんぼとはちがうなぁ~と感心。病み付きになって困った。
プルプルのオレンジゼリーを器に入れる仕事なんかは、余分が出ると、「食べてみていいわよ」と言ってくれた。
これまでプッチンプリンみたいなプラスチックに入ったゼリーしか食べたことが無かった庶民には、劇的に美味しかった。
私が感動していると「このやわらかさを出すのは大変なのよ」って、おばさんは鼻歌でも歌っていたような気がする。

そんなケーキ屋さんでも、売れ残りは出た。ほとんど私に回ってくることはなかったが、よほど余ると時々寮に持って帰らせてくれた。
その時はじめて食べたのが、「サヴァラン」だ。

ドーナツ型のスポンジの部分にフォークを入れると、ジュワッとお酒が滴る。その店のサヴァランは酔っ払うんじゃないかというくらいの香りがした。
上に生クリームが乗ってはいるけど甘いとか、濃厚とか、そんなんじゃない。
今まで私が食べたことがあるケーキとは、まったく別の魅力があるサヴァランが大好きになった。
(一度、実家に持って帰ろうとして夜行フェリーに持ち込んだが、当然小倉港についたら、お酒の香りとは違うニオイに変わっていた!)

それ以来、サヴァランがあるとつい買ってしまう。
サヴァランは、どこのケーキ屋さんでもあるものじゃないし、あるからといって、美味しいわけではない。飛びついてみては、ガッカリすることもしばしば。
スポンジの食感やシロップの染み具合、上に乗せたクリームとのコンビネーション。絶妙なバランスでこの大人っぽさは完成されている。

先週、なにげなく入った室町仏光寺上ルの「シトロン サレ」で、久々に遭遇したサヴァラン。

正直言うと、あのおばさんの味はもう覚えてない。多分、この「シトロン サレ」のサヴァランほうが洗練されていて、見た目も味もいいんじゃないかと思う。
でも、やっぱりあのおばさんの店を思い出さずにはいられない。

結局「気分転換」は3ヶ月かそこらで終了し、本気で大学をやめることにした。
そんな18歳のあの悩ましき時代が、ちょっと恋しいからかも。

「おとな旅プレミアム 京都」(TAC出版)が出版されています

取材をお手伝いした「おとな旅プレミアム 京都」(TAC出版)が出版されています。プレミアムな情報が満載で900円(税別)です。書店でどうぞ。どこでもそうだとは思いますが、京都も梅雨の真っただ中です。

「百万遍さんの手作り市」に行ってきた

 

知恩寺で毎月15日に開催される手作り市。京都各地の手作り市の先駆け的な存在がこの「百万遍さんの手作り市」なのだとか。「人気の店はすぐに売り切れるから午前中に行くといいよ」と知人に聞いて、午前10時半に到着。「手づくり市」と描かれた真っ赤なのぼりの脇を通ると、境内にひしめきあうように並んだ店、そしてそれを物色するたくさんの人が目に入った。食べ物、洋服、アクセサリー、うつわ、文房具やインテリア雑貨など、ジャンルもテイストもさまざま。早速、門をくぐってすぐ左手にあったパン屋の行列に加わる。「紅大豆入りリュスティック」をひとつ買う。ドライフルーツ入りでずっしり重い。そのほかにも焼き菓子、ハチミツ、ちりめん山椒……。人の間をすり抜けてぐるぐると回っていると、いろいろな食べ物の店があった。梅雨のこの蒸し暑い空気に後押しされて、レモネードやアイスコーヒーを売る店がひときわ繁盛していた。
ハーブティーを売っているフランス人の女性に出合った。その方によると「よもぎ茶」がおすすめということ。「よもぎはとにかく万能で、心を静めるというよりも元気を出してくれるから、夏ばてとかにはぴったり」だという。ひと口いただいたら、思いのほかすっきりとした口当たり。亀岡で収穫したよもぎを使っているのだそう。今日2つ目のお買い上げはこのお茶にしよう。
それから食べ物以外で気になったのは洋服。ある店で見た、衿付きのチャコールグレーのブラウスは、シンプルなのになぜだか、印象に残った。若手の作家さんの作品らしい。これが手作りの魅力か。食べ物も、それ以外も、何だって1点もの。作り手の気配が込められていて、ひとつひとつが特別。その気配に心動かされて、宝探しをするように店を巡った。まるで子どものころに読んだ『魔女の宅急便』のキキが行った青空市みたい、なんて思いながら。汗だくで。(アシスタントM)

お手伝いした「manimani京都」が出版されています

JTBパブリッシングから4月1日に発行された「manimani京都」。
少し取材をお手伝いさせていただきました。
こちらの本は、京都のカメラマンやライターがいろいろなスポットを紹介していて、
今までのガイド本とはちょっと雰囲気が違います。
写真もきれいで、雑誌のようです。
ぜひ書店で。

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