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コラム

心が上向いてくる「イチジクのガレット」

京都御所の南側に雰囲気の良いガレットのお店、「neuf creperie」がある。中心地からほど近い静かな場所にあり、黒地に金の文字で書かれた看板の下、古い木のドアが嵌められたガラス張りの洒落た店構えは、パリの街角にありそうな佇まいをしている。
たとえばお皿いっぱいに広がった薄いこげ茶色の生地の上に、春の庭のようなフレッシュなサラダが軽やかに盛られ、そこにいちじくと鴨肉、ブルーベリーのソースが添えられている「鴨肉とイチジクのサラダ ブルーベリーソースがけガレット」(イチジクのある間だけのメニューだそう)。目の前に出されたとき、鮮やかな色合いがとてもきれいで、思わず少し高揚してしまう。食べてみると本格フレンチのように複雑な味がして、バルサミコやオリーブオイルや塩こしょうを使いこなしたプロによるものだと感じる。うすくやわらかいそば粉の生地の中には、チーズが主張しすぎない程度に入っていて、料理にコクを与えている。
私がこのお店を好きな理由に、本来はフランスの素朴な郷土料理だったであろうガレットが、特別感のある、人を魅了するものに仕上がっているということもある。家の料理もこんなふうにもっときれいに盛り付けてみよう、とか、食べている姿が美しく見えるようになりたい、とか、このお店に来ると、毎日くりかえす小さなことをできるだけ心地良いものにしていきたいという気持ちになれる。(アシスタントM)