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コラム

色彩作家・内藤麻美子さん「ありのままの想いを認めて、色で自由に表現」


もし、「今の気持ちを色で表すとしたら?」と問われて、仮に「緑です」と答えたとする。その緑色は、私とあなたとで同じ色だろうか。おそらく、そんなことはないと思う。雨上がりの芝生のようなイキイキした色もあれば、葉陰で息をひそめていた年老いたカエルのような緑もある。今言った2つの緑だって、他人と全く同じ色を想像するのは不可能だ。それだけ、色には幅がある、と私は思う。

そして最初に、「今の気持ち」が1色だと決めつけたことも、ちょっと反省したい。人の気持ちには、不安と同時に期待が入り混じるものだ。1つではない。そのことを教えてくれたのが、色彩作家の内藤麻美子さん。日本画の顔料を使い、気持ちを色で表現するアーティストだ。

内藤さんが発表している色見本がある。〝ふとした優しさ色〟〝結果への期待色〟〝好きの不安色〟〝混乱の涙色〟。どれも複数の色が隣り合い、一部が混ざり合うなど抽象的。ふんわりとぼやけていたり、じんわりとにじんでいたり。何色とひとことで言うのは難しく、いわばあいまいなまま。どんな感情にも、「本当にそう?」「きっとそうだよ!」というような気持の揺れがあって当然。それを見える化してくれているよう。

「私が作った色名を、同じように感じることが難しいと思う人がいるかもしれません。そこにコミュニケーションが生まれることも良いと思っています。色は使う素材、光によって見え方が変わります。その日の気分によっても違って見えます。それくらいあいまいで不確かなところも魅力の一つです」

子どもの頃、転校が多く、コミュニケーションが苦手で、絵を描くことに夢中になったという内藤さん。武蔵野美術大学卒業後、グラフィックデザインの仕事を経て、渡英。アイデンティティを確立した現地のアーティストたちと出会ったことで、「自分らしさ」について考えるように。そうして辿り着いたのが、色での独自表現だった。そして現在、企業とのコラボレーション、個展などの創作活動、そして一般の人を対象にしたワークショップにも力を入れている。

「たくさんの情報が溢れ、日々色んな事が起きる現代では、自分の気持ちを自分でもよくわかっていない人が多いのではないしょうか。〝気持ち〟とは常に変化し続けていて、誰とも違うものだけど、他者と共有することができるものだと思うのです」

気持ちを繊細に表現でき、人に伝えることができる色。その表現は尽きることがなく、誰にもまねできない。内藤さんが見せてくれているのは、生身の人間の気持ちのあいまいさ。そしてそれでよいのだということ。広くて深い色の表現。みなさんも、色の表現、ワークショップで挑戦してみませんか?

(文・写真 ちくしともみ)

 

色彩作家・内藤麻美子さんのワークショップ「今年の気持ちを表した色を表紙に。2020年を一緒に過ごすノートをつくりましょう」

2020年はどんな風に始まりましたか? 2月3日は節分。旧暦で言えば、翌日の立春が一年の始まりです。そこで今年の目標や想いを色で表してみませんか? 色彩作家・内藤麻美子さんをお迎えして、あなたの気持ちを色で表した作品を表紙にしたノートをつくるワークショップを開催します。最初のページにはぜひノート完成日の想いを書いてください。そして折に触れてこのノートをひらいて、想いを書き足して。自分の変化を振り返りながら、素敵な一年にしてくださいね。

〈内容〉
最初に、色選びについて内藤さんに少しお話していただき、一緒に色選びを。実際のノートよりも大きなサイズのパネルに、筆や刷毛を使って自由に描いた後で、表紙に使う部分をトリミングします。こちらを表紙として、ノート本体にセット。穴をあけ、ひもで綴じて完成です。

※作成するノートのイメージ。このあと穴をあけて、「三つ目綴じ」という製本の方法で綴じます。作成するノートは1つです

日時 2020年2月1日(土)・2日(日)14:00~
所要時間 2時間程度
各日 定員5名
費用 4000円(材料代込み・飲み物付き。税込み)
会場 店と催し 雨露(京都市左京区聖護院山王町18 メタボ岡崎106 文と編集の杜内 アクセス 市バス「熊野神社前」より徒歩5分)
お申込み bhnomori@gmail.com/℡075(354)5373 担当 瓜生(うりう)
※「店と催し 雨露」オープンプレイベントです。 協力 市野亜由美さん

※ノート本体には、二条城近くの印刷会社、修美社さんの「紙出(しで)」を使用します。紙出とは、印刷の際に出てしまった用紙の残り。運悪く印刷されなかったために、倉庫に眠っているあまり紙です。修美社さんはこの紙出をノートにするなど活用しています。

■プロフィール 色彩作家・内藤麻美子 http://mamikonaito.com
1982年神戸生まれ。2006年武蔵野美術大学デザイン情報学科卒業後、Antenna Graphic Base にてグラフィックデザイナーとして勤務。2009年Central Saint Martins/Graphic Folio,Mixed media Painting コース終了。2012年より京都に拠点を移し、色彩作家としての美術活動を開始。2013年より京都造形大学非常勤講師。創業260年の老舗顔料店上羽絵惣にて色彩ワークショップを定期開催。企業から依頼されたクワイアントワークに、POLA、Wacol、森永製菓などがある。